080521(水) 吉田戦車と『建築の解体』

昨日の講義で、言葉の意味とは何かを喋るネタに吉田戦車の『伝染るんです。』の中のいくつかの漫画を使ったのだが、学生たちが吉田戦車を知らないので驚いた。こんなことを書くと神戸芸工大環境・建築デザイン学科の恥さらしなのか、それとも世間の大学生もそんなものなのか。他大学の先生、ぜひコメントに書き込んで下さい。

というわけで、ちょっと前の重要な文化が継承されないことに危機感を覚え、ちょうど芸工大図書館の広報誌「ビブリオテイク」から500字ほどで本の紹介原稿を頼まれていたのを思い出し、磯崎さんの『建築の解体』を絶対に読めという以下の文章を書いた。商業誌じゃないから、発行前に載せてもいいだろう。少しでも早く学生諸君の読書計画に組み入れてほしいから。

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『建築の解体』(磯崎新、鹿島出版会)

 建築家・磯崎新が、1960年代の世界の建築デザインの最前線を、ハンス・ホライン、アーキグラム、チャールス・ムーアら7人の建築家の思考を分析し、かつ「《建築の解体》症候群」という論文で整理した書物である。1975年に美術出版社から刊行されたものの復刻版。近代建築に代わるデザイン手法を求め、1960年代に建築界で繰り広げられた議論の全貌を把握するには不可欠の書だ。
 私は、建築学科に進学前の大学2年生の夏休み、この本を読んだ。建築家や建築の名前はもとより、怒濤のごとく押し寄せる哲学、言語学、文学など他分野の言葉に潰されそうになりながら、知らない言葉に鉛筆で線を引きまくった。この本に載っているカタカナ語は全部覚えてやるぞと、受験生のような気分だったことを思い出す。おかげで、図面の1枚も描いたことがないくせに、「近代建築は終わった」と呟く頭でっかちになって建築学科に進学した。
 環境・建築デザイン学科の学生には必読の書。この本を開き、そこにでてくる知らない言葉をすべて辞書やネットで調べてほしい。その単純な作業を何週間でも何ヶ月でも続けることだ。最近の建築家が書くお手軽本など読む暇があったら、そういう暗いトンネルの掘削に挑んでほしい。もし出口の光が見えたら、次は磯崎の弟子・八束はじめの本に挑戦すること。
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by yoshiaki-hanada | 2008-05-22 00:34 | ●花田の日記
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